宇治拾遺物語【小野篁、広才のこと】~今は昔、小野篁といふ人おはしけり~様々な重要敬語表現を覚えてしまおう!!内容も面白いので勉強しやすい作品です!!

宇治拾遺物語 『小野篁、広才のこと』イラスト
目次

【文法と定期試験のポイント】文法は敬語表現がメイン。助動詞や係り結びなどもお忘れなく!!

この単元の一番のポイントは敬語表現です。『おはす』『仰す』『候ふ』『参らす』『申す』『給ふ』『奏す』が出ています。
テストでは尊敬語、謙譲語、丁寧語の区別に加えて、敬意の方向が問われます。以下にまとめておきますので暗記してしまいましょう。

尊敬語 本動詞『おはす』『仰す』/補助動詞『給ふ』
謙譲語 本動詞『申す』『奏す』/補助動詞『参らす』
丁寧語 補助動詞『候ふ』

敬意の方向ですが、会話文では”話し手”からの敬意、地の文(会話文以外の文)では”作者”からの敬意となります。

以上の敬語表現の中でも、ほぼ100%出題されるのは『奏す』ですね。
『奏す』は敬語の中でも『絶対敬語』と呼ばれており、天皇・上皇・法皇に対してのみ使われる謙譲語で”申し上げる”という意味です。ちなみに、『奏す』の仲間には『啓す』というのもあって、こちらは皇后・中宮・皇太子に対して使われます。

さらに、この単元では嵯峨天皇の行為も多いことから、二重尊敬も使われています。これは天皇や上皇、皇后、皇太子などなど、すごく偉い人に対して使われます。
『仰せらる』と『せ給ふ』がそれにあたります。尊敬の助動詞の”らる”・”す”、尊敬語の”仰す”・”給ふ”を重ねることで、メチャクチャ尊敬するってわけですね。

そして、最後に自敬表現です。
『ただ申せ。』と嵯峨天皇が篁に命令するのですが、この”申せ”は帝の言葉なのに敬意も帝に対してです。このように天皇や上皇のような身分の高い人が自分に対して敬語表現を使うことを自敬表現と言います。

続いて、助動詞についてです。『けり』『たり』『なり』『ぬ』『つ』『む』『じ』『らる』『す』が使われています。
どれが問われるかと言うと、上でも書いたように敬語表現と合わせて『らる』『す』は出題されます。

それ以外もどれが出題されてもおかしくないのですが、ヤマを張るなら、『なり』と『ぬ』と『じ』かな。
本文内で『なり』は連用形の”に”という形で現れますので、格助詞や接続助詞の”に”との識別が必要になります。『”に”の識別』は受験にも必須なのですが、古文が苦手な人は定期試験ではどれが助動詞か暗記しちゃってもいいかも。

入試にも頻出の「に」の識別
  1. 完了の助動詞「ぬ」の連用形
    (「にき・にけり」は必ず完了の助動詞「ぬ」です。本単元でも最後に「”に”けり」で登場。)
  2. 断定の助動詞「なり」の連用形 
    (「にや・にか・にこそ」は必ず断定の助動詞「なり」です。本単元では「恐れ”に”て」で登場。)
  3. 格助詞「に」(訳:~に)
  4. 接続助詞「に」(訳:~ので、~すると、~だが)
    ~に、の場合はほぼ接続助詞
  5. 形容動詞「ナリ活用」の連用形の一部
  6. 副詞の一部
  7. ナ変動詞の一部

今回のお話の中では上記①~④が登場します。
入試や模試などで初見で識別する場合は、接続という直前の単語やその活用から判断します。

完了の助動詞は直前が活用語の連用形で見分けやすいです。それに対して断定の助動詞の方は見分けが難しいです。
この単元でも、断定の助動詞は接続が体言(名詞)と連体形で、これは助詞の「に」と同じ接続なので文脈判断が必要になります。難易度が高いので、定期試験なら、暗記でもいいと思います。

『な』は完了の助動詞「ぬ」なんですが、完了ではなく、強意の意味で出てきます。本単元のように「なむ」の形で出てきている場合は、強意の「ぬ」+推量(意思)の「む」となります。

『じ』は本文内で『え申し候はじ』で現れます。これは『え(副詞)+打消表現』で不可能の意味の文法表現ですので、これと合わせて出題される可能性は高いです。

係り結びも数か所出てきます。現代語訳では「や、か」の疑問・反語、「こそ」の結びが已然形っていうのも確認しておきましょう。

【あらすじ】帝に無理やり言わされて、疑われる篁君が気の毒過ぎて笑っちゃいます!!そして、”子”が12個で何と読む!?

宇治拾遺物語とは?
  • 作品ジャンル:説話集
  • 成立年代:鎌倉時代前期(13世紀前半)
  • 編者:未詳

197編の物語が収録された説話集で分類されていない。滑稽談が多く、口伝を集めたものである。『今は昔』で始まる。 『古今著聞集』と『今昔物語集』と合わせて『日本三大説話集』と呼ばれる。

本作品は、小野篁という人は歌人であり書家でもあり、学識の面でも文句なしの才人です。
彼の詠んだ和歌は古今和歌集にも選ばれています。

宮中に『無悪善』という立札が立てられて、嵯峨天皇に「何と読む?」と聞かれた篁。
篁は「さがなくてよからむ」(嵯峨天皇がいなければ良いだろう)と読むことは分かったが、帝の不興を買いたくないため、言葉を濁す。ところが、繰り返し聞かれて、仕方なしに答えることに…。

その結果、帝に書いた犯人じゃないかと疑われることになっちゃいます(笑)「これを読めるのはお前しかいない、だから書いたのもお前だ!!」ってわけ。そんな無茶な(笑)

「だから言いたくなかったんだ!!」っていう篁君の気持ち、お察します。

だけど、罰せられることはありませんのでご安心を。
「お前が書いたんじゃないのに読めたって言うんなら、書かれてるものなら何でも読めるよな?」って言われて「はい、読めます!!」と自ら潔白を証明することに。

そこで帝自ら”子”を12個書き並べて、はい、読んでみろ!!ってなるのですが、「猫の子の子猫、獅子の子の子獅子」と一瞬で読むことで嵯峨天皇もその賢さにニッコリ!!って展開です。

【小野篁、広才のこと】授業ノートはこちらです。画像とPDFの好きな方をご覧ください。

『小野篁、広才のこと』は様々な教科書に掲載されている題材ですので、漢字などに違いがある場合があります。内容は同じです。当サイトの原文は東京書籍に合わせて作っています。

宇治拾遺物語『小野篁、広才のこと』品詞分解と現代語訳
宇治拾遺物語『小野篁、広才のこと』品詞分解と現代語訳
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この記事を書いた人

塾長&塾講師として教えること15年を越えました。 古文を教える傍ら、生徒の持ってくる過去問を精査してよく出題されるポイントなどをまとめてみました。

また、このサイトのイラストは、イラストレーターの町屋ちよさんに依頼して描いていただいたものです。当サイト以外での使用はお控えください。

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